制服や作業服は、飲食店などのサービス業や警備会社、製造工場などで多く使用されています。制服には業種に合った機能的な要素があり、業種の役割を示したり、社内の統一感を出したりすることが可能です。
制服や作業服は業務に必要であるため、費用は会社負担として従業員に支給することが一般的です。制服を着用する業種の経理担当者は、制服の勘定科目についてどのように扱うべきか悩むこともありますが、会社によって制服の扱いが異なります。
今回は、制服やクリーニング代の勘定科目に対する考え方、記帳方法など、制服の勘定科目に関する豆知識と共に紹介します。
1.制服の勘定科目は福利厚生費?消耗品費?
制服には飲食業の調理やホール担当者・医療職の白衣・警備会社の制服など、その業種に欠かせない制服が数多くあります。
一般的に、職場のみで着用し仕事中に使用する制服や作業服の勘定科目は、「福利厚生費」となります。安全靴やナースシューズなど、その業種の必須アイテムとなる小物類も同様です。
しかし、プライベートでも着用できる私服やスーツを支給する場合は、福利厚生費として計上することはできません。あくまでも業務を遂行するために必要な備品として支給される制服が福利厚生費となります。
福利厚生費は、従業員に支給される報酬の一部です。そのため、社長や従業員のいない個人事業主本人は、自分用に制服を購入しても福利厚生費として扱うことができません。この場合は、消耗品扱いとなります。
1-1.制服のクリーニング代の勘定科目は?
制服や作業服は、毎日の業務で使用するためクリーニングが必要となり、その費用は「福利厚生費」として計上することが可能です。
しかし、クリーニング代を福利厚生費として扱うためには、「従業員全員の制服が対象となり、かつ適切な金額であることが条件」となります。一部の従業員だけである場合や、妥当な金額ではない場合は、福利厚生費として認められません。
従業員が着用する制服のクリーニング代を負担することは、働きやすさや勤労意欲の向上につながるといった観点から、福利厚生費として計上することが可能です。
しかし、飲食店でお客さんが使用するおしぼりや美容室で使用するタオルなどのクリーニング代は、従業員のためではありません。したがって、福利厚生費として扱うことができず「衛生費」として扱われます。
また、年に数回ほどの少額となるクリーニング代は「雑費」として分類します。
こちらの記事では制服が心理面にもたらす効果と、企業が得られるメリットについて解説しています。あわせてご覧ください。
2.制服代・クリーニング代の勘定科目の記帳方法
制服の購入費やクリーニング代などの経費は、帳簿に記録しなければなりません。クリーニング代の場合は、すべての従業員に支給された制服や作業服が対象となります。
一部の従業員だけ制服のクリーニング代を負担している場合は、「福利厚生費」ではなく、「給与」として取り扱うケースもあります。給与として取り扱う場合は、課税対象となるため注意が必要です。
同じクリーニング代でも、お客さんが使用するおしぼりやタオルなどのクリーニング代は、衛生費として計上するため、記帳のときに区別が必要です。
制服の購入代金やクリーニング代、お客さんが使用する備品のクリーニング代に関する勘定科目は、下記のように記帳します。
例1: 従業員の制服代を現金で15万円支払った場合 |
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借方科目 | 福利厚生費 |
金額(円) | 150,000 |
貸方科目 | 現金 |
金額(円) | 150,000 |
適用 | 制服代 |
例2: 従業員の制服のクリーニング代を普通預金から6万円支払った場合 |
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借方科目 | 福利厚生費 |
金額(円) | 60,000 |
貸方科目 | 普通預金 |
金額(円) | 60,000 |
適用 | 制服のクリーニング代 |
例3: お客さんのおしぼりのクリーニング代を現金で1万円支払った場合 |
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借方科目 | 衛生費 |
金額(円) | 10,000 |
貸方科目 | 現金 |
金額(円) | 10,000 |
適用 | おしぼりのクリーニング代 |
借方科目に「福利厚生費」や「衛生費」として取り扱ったことを記入し、貸方科目では現金や預金など、どのような方法で支払ったかを記載します。
金額欄には、それぞれの金額を領収書と照らし合わせて正しく記入することが大切です。
適用欄には、制服代やクリーニング代など、何に支払ったかを記入します。
3.制服の勘定科目に関する豆知識
基本的に、従業員の制服に関する勘定科目は「福利厚生費」となりますが、例外があります。例えば、仕事で着用するスーツや、製造業などで着用される制服・作業服の場合です。会社によって制服の扱いが異なり、非課税となる制服と課税となる制服があります。
制服の勘定科目に関する知識として、非課税所得となる制服、スーツの扱い、会社によって制服の勘定科目が異なるケースについて説明します。
3-1.制服の支給代は非課税所得になる
従業員用に制服を購入して福利厚生費として扱った場合、非課税所得となります。
所得税法で非課税とされる制服とは、警察職員、医療職員、鉄道職員などが着用する制服です。これらの業種ように、非課税とされる制服は、制服着用義務のある人に対して会社が支給する制服に限られています。
これらの制服は、業務の性質上、着用することが義務となっており、私用としては着用できません。制服は現物支給し、職場でのみ着用するといった条件があります。また、事務用の制服や作業服も制服に準ずる衣服と考えられ、現物給与としては非課税です。
私服出勤で私服のまま勤務する場合に衣服代を支給されるケースは、制服ではないこと、現物支給ではないことから、福利厚生費として扱うことができません。この場合は、従業員の所得とみなされ課税対象となります。
3-2.スーツは制服として経費計上できない
仕事で毎日着用するスーツであっても、福利厚生費としては扱えません。スーツは職場限りの着用ではなく、定休日などのプライベートでも着用できるため、給与所得者の利益とみなされることが理由です。そのため課税され、源泉徴収の対象となります。
制服は、業務を行う上で会社内だけで着用する衣服といった認識です。プライベートのときでも着用できるスーツは、福利厚生の範囲とはいえません。
3-3.会社によって制服の勘定科目は異なる
制服の多くが福利厚生費となりますが、会社によって勘定科目の異なる場合があります。
例えば、製造業や建築業で作業服を「売上原価」扱いにするケースや、製造業などではない業種で「消耗品」扱いにするケースです。
「売上原価」扱いするケースでは、製造原価に含まれるお金は原料や材料費・原料の輸送費・工場の道具・電気代・人件費などが含まれます。人件費の中には、給料以外の福利厚生費も入るため、作業服(制服)も製造原価とする考え方です。
また、制服を「消耗品費」として扱う会社も存在します。
一般的に制服を消耗品とする場合は、売上に直接関係しない一般管理費と混同する恐れがあります。しかし、製造業や建築業でない業種の場合は、制服や作業服と売上が直接は関係しないため、「消耗品」としても問題にはなりません。
どのような場合でも、会社がこれまで行ってきた勘定科目で処理することが大切です。これまでと異なる勘定科目で処理すると認められないことがあります。転職して新しい会社に入社したときは、会社のルールに合わせましょう。
まとめ
制服や作業服に関する勘定科目のほとんどは、「福利厚生費」として計上され、非課税となります。クリーニング代に関しては、従業員全員の制服を対象とすれば、福利厚生費として扱うことが可能です。
業務以外でも着用できるスーツは、福利厚生費として認められません。従業員への給与とみなされ、課税対象となる可能性があります。会社によっては、売上原価や消耗品として扱われます。いずれにしてもこれまでと同じ勘定科目で処理することが大切です。
制服の勘定科目に関する知識を身に付け、スムーズな経理を行いましょう。
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